ZEH-Okinawaプロジェクト

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沖縄の住環境の向上とゼロエネルギーハウスの普及に向けた研究と開発。

換気の検証

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温湿度測定結果

図1 8月11日 うるま市A様邸測定結果
青の塗りつぶしは、エアコン稼動時間を示す。

右図は、うるま市A様邸にて、8月の平均的な1日を取り上げたグラフである。室内外の温湿度および1階居間に設置されたエアコンの吹き出し口温度について、温度を実線、湿度を点線で示している。天気については、時折雲は出ていたものの、概ね晴れていた。

下表に、上記グラフの6時、11時、18時の各時点の温湿度および外気の水蒸気量と露点を示した。

露点:水蒸気を含んだ空気の温度を下げていったとき、凝結(水蒸気から水への変化)が始まる温度。

温度によって、空気中に気体として存在できる水蒸気の量は決まっている。ある温度の時にその空気中に含むことが出来る水蒸気の最大量を飽和水蒸気量という。露点とは、空気中に含まれる温度と飽和水蒸気量が等しくなる温度のことである。

表1 8月11日 うるま市A様邸測定結果抜粋

時刻屋外温度(℃)屋外湿度(%)屋内温度(℃)屋内湿度(%)露店(℃)外気の水蒸気量(g/㎥)
6時26.98725.6562321.93
11時33.56127.8632422.94
18時31.26627.8552422.24

※露点は、外気の水蒸気量より計算。

屋外温湿度は明け方から日中にかけて大きく変動するが、外気中に含まれている水蒸気量は、1日を通してあまり変化していないことがわかる。従って、露点に関しても大きな変動はなく23、24℃前後であった。

今回の測定における湿度とは相対湿度のことであり、ある気温条件下における飽和水蒸気量に対する含有水蒸気量の割合を指す。気温と飽和水蒸気量との間には相関があり、気温が高くなれば飽和水蒸気量も増加するため、水蒸気量が一定のとき、気温が上昇すると湿度は低下する。従って、外気の温度と湿度のグラフは、上下を反転させたような形になる。

A様邸では、夏場は基本的に窓を開けず、エアコンによる冷房にのみ頼っているため、室内の温度は27℃前後、湿度は60%前後にとどまっている。しかしながら、窓を開けて、水蒸気を多く含んだ空気を室内に取り入れてしまったらどうなるだろうか?

住宅において湿度は大きな問題である。なぜなら屋内湿度が高くなると、結露の発生、さらにはカビの発生にも繋がる恐れがあるためである。カビが発生すると、やがてはシックハウス症候群発症の心配も生じる。今回の場合、外気の水蒸気量は22g/㎥前後であり、露点は約24℃。とあるタイミングで窓を開けて外気を取り入れ、部屋に水蒸気を含んだ空気がたまった状態でエアコンを稼働させて、室温が低下するとどうなるか。壁の表面が24℃を少しでも下回った段階で“結露”が生じるのである。結露した部分ではカビの発生率が高まり、さらにはカビを餌とするダニが発生する。やがてダニが死骸となり、居住者にシックハウス症候群を引き起こす原因となりうる可能性がある。A様邸のこの日の居間における最低気温は24.9℃であった。無断熱であるために壁の表面温度は外壁からの熱を受け、約28℃であったが、家具の表面など、部分的には室内で24℃を下回った部分があったかもしれない…!!

<結露発生~カビ・ダニ発生のメカニズム>

  1. ① 窓を開けると、湿度の高い空気が室内に入ってくる。(湿度が高い=水蒸気を多く含む)


  2. ② 室内温度上昇のため、エアコン(冷房)を稼働。

    ③ エアコンの冷気により室内の空気が冷やされる。水蒸気を多く含んだ空気は露点が高く、露点に達した部分では、結露が発生。


  3. ④ 結露が発生した部分にカビが発生。さらに、カビを餌とするダニが発生。

    カビやダニの死骸がシックハウス症候群の原因に!!


<結露の発生を防ぐには>

結露の発生を抑えるためには、①断熱をしない、②窓を開けない、③湿度をコントロールできる換気システムの導入、という3つの方法がある。

①断熱をしない

断熱をすると冷房の効きがよくなるため、壁表面の温度が低下し、結露が発生しやすくなる。逆に断熱をしなければ日射により外壁が温められ、その熱がそのまま室内側の壁をも温めるため、結露発生のリスクを低減できるのである。

しかし、断熱をしなければ先に述べたように外部からの熱が室内を温めるため、冷房の効きが悪くなるとともに消費エネルギーも大きくなり、不快な環境となりやすくなる。あまりおすすめはできない。

②窓を開けない

根本的に湿度を室内に入れなければ、露点は低くなり結露は発生しにくくなる。きちんと断熱されている住宅ならば、エアコンの冷房負荷は減少し、消費エネルギーが小さくなる。従って、連続運転をしていても電気料金を低く抑えることができる。窓を開けるまでもなく、快適な温熱環境を実現することが出来るだろう。

③湿度をコントロールできる換気システムの導入

エアコンだけで快適な居住環境を実現できるとしても、窓を開けて風を取り入れたい…という場合、窓を開けたとしても室内の湿度をコントロールできる環境であれば問題ない。湿度の高い沖縄県では、ぜひとも湿度をコントロールできる全熱式の換気システムや、デマンド換気を導入してもらい、一定の室温・湿度を保てる環境づくりを心掛けてほしい。

結露を防ぐために湿度を下げればいいのなら除湿器を使えばいい、と思われる方もいるかもしれない。しかし、注意してもらいたいのは、「除湿器は室温を上げてしまう」ということである。除湿器は、空気中の水蒸気を水へと変化させることで室内の湿度を下げる。しかしながら、この水蒸気が水に変化する際には、熱が発生する(打ち水と逆の原理である)。また、そこにモーターの排熱も加わるため、除湿器は湿度を下げる一方で熱源となってしまうのである。

断熱改修や換気システム導入の予定はないけれど、窓は開けたい…という場合は、湿度が高くなる夏場だけでも窓を開けることを控えてもらいたい。

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